ロスなく内をさばいた蛯名の頭脳プレーが勝敗を分けた/天皇賞・春
【5月4日 京都11R 天皇賞・春】
蛯名騎手はロスなく内をさばいた。首、鼻の接戦はコース取りの差、といってもいい。1周目坂の下りで中団内めのポジションを取ったフェノーメノは、大外からマクリ気味に進出するウインバリアシオン、キズナ、ゴールドシップとは対照的に、最終コーナーまで馬込みで我慢した。
残り600㍍地点ではサイレントメロディ、レッドカドーの間、4角から直線にかけてもアドマイヤフライト、ウインバリアシオンの間と外へは出さず、スムーズに馬群を割る。最近は坂の下りを利用してロングスパートをかける馬も多いが、もともとは「ゆっくり上り、ゆっくり下らなければならない」といわれる京都の難所。脚の使いどころも勝敗を分けた。
ゴールから逆算して2ハロン目は、レースラップ最速の11秒1。後方の有力馬が一気に差を詰めてきた地点だが、これだけ速いとコーナーで外を回って追い上げた馬は、余計に脚(たぶん10秒台)を使わされる。3強にはそれが最後にきて影響した。事実、上がり3ハロンの比較では、フェノーメノの34秒3よりキズナ(34秒0)、ウイン(34秒1)の方が勝っている。それでも逆転できなかったのは、並ぶまでに脚を使わせた蛯名の頭脳プレーによるところが大きい。
惜しかったのは2着のウインバリアシオンだ。武幸騎手は「勝つ勢いだったけど、あと100㍍で止まった」と振り返った。結果的には高速ラップで大外マクリをかけたツケが、ゴール前に出たと言わざるを得ない。とはいえ、キズナに対しては持久力を生かした早仕掛けで相手を動かし、自慢の「切れ」を封じた。肉を斬らせて骨を断つ。勝負の騎乗で武豊との兄弟対決には勝ったが・・・あと1歩及ばなかった。